このような時代だからこそ考えてみませんか「接遇」について その8

(4)言葉遣い②~心配りを表す表現~

人とメディケア研究所 箕輪由紀子

今回は、マナーの5つの基本要素(1)挨拶(2)表情(3)身だしなみ(4)言葉遣い(5)立ち居振る舞いのうち、言葉遣いについての二回目です。

前回の記事はこちらから (4)言葉遣い①~適切な敬語を使う~

前回は敬語についてでしたが、今回は「心配りを表す表現」を考えてみましょう。患者さま、ご家族、上司に対しての会話では、適切な敬語だけではなく少し表現を変えるだけで人間関係が円滑になるということがあります。逆にいうと、そこに気をつけないと人間関係に亀裂が生じる恐れがあるということです。

1)クッション言葉

会話の中に使うことで表現をやわらげる効果のある言葉を“クッション言葉”といいます。依頼をするときや、相手のご意向に添えないときに意識して使うと、少々きつい表現もソフトな印象に変ります。

・恐れ入りますが・お手数ですが・あいにく

・ご面倒ですが・よろしければ・失礼ですが

・お差支えなければ・申し訳ございませんが

・ご足労ですが・ご存知のことと思いますが

2)否定形は肯定形に

否定や断りの表現は、語調によってはきつい感じを与えることがあります。

・〇〇できません→〇〇いたしかねます

・わかりません→わかりかねます

3)指示・命令形は依頼形に

指示や命令の表現は、依頼する表現に言い換えができます。

・〇〇ください→〇〇いただけますか

・お待ちください→お待ちいただけますか

忙しいときに、優しく「お待ちください」とは、なかなか言えないものです。また、依頼形にすると、相手に選択権が得られることがあります。「時間がないからまたでいいか」と思っても、「お待ちください」と言われると、「あっ、はい」となりかねません。

【好ましくない会話例】

患者「すみません、鈴木といいます。もう二時間以上待っているのですが、まだ診察に呼ばれないのです。まだでしょうか?」

職員「私にはわかりません。聞いてきますので少々お待ちください」

【好ましい会話例】

患者「すみません、鈴木といいます。もう二時間以上待っているのですが、まだ診察に呼ばれないのです。まだでしょうか?」

職員「お待たせして申し訳ありません。私にはわかりかねますので、ただ今確認してまいります。恐れ入りますが、少々お待ちいただけますか」

4)マイナス・プラス法を利用

マイナスの内容とプラスの内容を伝える場合には、マイナスを先に伝え、プラスを後にします。後に伝えたほうが相手の記憶に残りやすいのです(心理学での親近効果)。

・この薬はよく効くのですが、高いです。

→この薬は高いですが、よく効きます。

参考 拙著「人間力とホスピタリティを極める心からの接遇」

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