このような時代だからこそ考えてみませんか「接遇」について その3
接遇とマナー
人とメディケア研究所 箕輪由紀子
前回は、接遇とは何か。ホスピタリティとサービスの関係についてお伝えしました。今回は接遇とマナーについて考えてみましょう。
医療に携わる方は皆さん優しい気持ちをお持ちです。その優しさや患者さまに対するおもてなしの気持ちは相手には見えません。では、どうしたらいいのでしょう?
相手に気持ちを伝えるために必要なのがマナーです。マナーとは礼儀作法と思うと、堅苦しくて面倒なことと感じます。そこで、マナーとは相手に不快な思いをさせないために気をつけること、相手に良い印象を持っていただき安心感を抱いていただくため、と考えると違う見方ができます。
イギリスの女流作家の言葉に「マナーとは想像力である」という言葉があります。
『マナーというのは、儀礼的な決まりごとを覚えて頑なに守るのが「良いマナー」ではない。いかに相手に嫌な思いをさせないか、心地よく過ごしてもらえるか。それらを「相手を思いやる気持ち」でどこまで考えられるか、どこまで実行できるか、それが「良いマナー」である』。
その例として、エリザベス女王の逸話を挙げています。
『エリザベス女王の晩餐会に出席したアフリカの王族が、フィンガーボウルの水を飲んだ。周囲の人は「あっ!」と思ったが、エリザベス女王は自分も同じようにフィンガーボウルの水を飲み干した。その振る舞いにより、その場の雰囲気が壊れることはなく、アフリカの王族も恥をかくことがなかった』
という実話です。フィンガーボウルの水を飲むのはテーブルマナーとしては違反ですが、相手のことを思いやり、心づかいをされた。これこそ「良いマナー」と言えます。相手がこうされたら「うれしい」と思うだろうことを考えて実行に移すためには、「想像力」が必要です。「想像力」を発揮するには、まず「気くばり力」が必要ですが、これは持って生まれた才能ではありません。生まれつき気の利く人ではなく、自分の努力で後から身につけられるものです。
せっかく患者さまのためにと医療従事者になったのに、「あなたが担当では嫌だ」と言われたら残念です。「あなたがいい」と言っていただくために、まず基本から身につけていきましょう。
《マナーの重要性》
- 一人ひとりが病院の代表
- コミュニケーションの潤滑油
- きちんとしたマナーにより、仕事の不安が自信になる
- 苦情の発生防止
次回はマナーの5大要素についてみていきます。
参考 拙著「人間力とホスピタリティを極める心からの接遇」